ROAとは何か

ROAとは、会社が持っている総資産を使って、どれだけ利益を生み出しているかを示す収益性分析の指標です。英語のReturn on Assetsの略で、日本語では「総資産利益率」と呼ばれます。初心者向けにいうと、「会社が持っている資産をどれだけ効率よく利益に変えているか」を見る指標です。

会社は、現金、売掛金、棚卸資産、建物、機械、土地、ソフトウェアなど、さまざまな資産を使って事業を行っています。売上や利益は、これらの資産を活用した結果として生まれます。ROAは、利益だけでなく、その利益を生むためにどれくらいの資産を使っているかに注目します。

たとえば、同じ10億円の利益を出している会社が2社あったとしても、片方は総資産100億円、もう片方は総資産500億円であれば、資産効率は異なります。少ない資産で同じ利益を出している会社のほうが、ROAは高くなります。

ただし、ROAが高ければ必ず良い会社、低ければ必ず悪い会社と単純に判断することはできません。業界によって必要な資産の量は大きく異なります。工場や設備を多く持つ製造業と、比較的少ない資産で運営できるサービス業では、ROAの水準が違って当然です。

この記事では、ROAとは何かを初心者にもわかりやすく整理しながら、計算式、見るポイント、ROEとの違い、業界比較の注意点、決算書で確認したい項目を解説します。

ROAは総資産から利益を生む力を見る指標です

ROAは、会社が保有している総資産を使って、どれだけ利益を生み出したかを見る指標です。総資産とは、貸借対照表の資産合計のことです。会社が持っている現金、売掛金、在庫、固定資産、投資有価証券などをすべて合計したものです。

会社は資産を使って事業を行います。商品を仕入れるためには現金が必要です。取引先に商品を販売すれば売掛金が発生します。製造業であれば工場や機械が必要です。小売業であれば店舗や在庫が必要です。これらの資産が利益を生むために使われます。

ROAは、その資産全体に対してどれだけ利益が出ているかを示します。総資産が大きいのに利益が小さければ、資産効率は低くなります。反対に、総資産がそれほど大きくなくても利益をしっかり出していれば、ROAは高くなります。

ROAを見ることで、会社が資産をため込んでいるだけなのか、資産を効率よく使って利益を生んでいるのかを考えることができます。収益性分析の中でも、利益と貸借対照表をつなげて読むための重要な指標です。

ROAの計算式

ROAの基本的な計算式は次のとおりです。

ROA = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100

たとえば、当期純利益が5億円、総資産が100億円の会社があるとします。この場合、ROAは5%です。

ROA = 5億円 ÷ 100億円 × 100 = 5%

これは、総資産100円に対して、最終利益を5円生み出したという意味です。

別の例として、当期純利益が5億円でも、総資産が250億円であれば、ROAは2%です。

ROA = 5億円 ÷ 250億円 × 100 = 2%

同じ5億円の利益でも、使っている資産の大きさが違えばROAは変わります。ROAは、利益の金額だけでなく、資産の規模に対する利益の効率を示す指標です。

なお、ROAの計算では、分子に当期純利益を使う場合もあれば、営業利益や経常利益を使う場合もあります。どの利益を使うかによって意味が少し変わります。一般的な比較では当期純利益を使うことが多いですが、本業の資産効率を見たい場合は営業利益を使う考え方もあります。指標を比較するときは、同じ計算方法で比べることが大切です。

総資産とは何を指すのか

ROAの分母になる総資産は、貸借対照表の資産合計です。資産には、流動資産と固定資産があります。

流動資産には、現金及び預金、売掛金、受取手形、棚卸資産などがあります。短期間で現金化される、または事業活動の中で使われる資産です。

固定資産には、建物、機械装置、土地、車両、ソフトウェア、投資有価証券などがあります。長期間にわたって事業に使う資産です。

ROAは、これらすべての資産を使ってどれだけ利益を出しているかを見る指標です。そのため、資産の中身も重要です。現金が多い会社、在庫が多い会社、工場設備が多い会社、のれんや無形資産が多い会社では、同じ総資産額でも意味が異なります。

たとえば、現金が多い会社は安全性が高く見える場合がありますが、その現金が利益を生んでいなければROAは低くなりやすいです。大きな設備を持つ会社では、固定資産を使って十分な利益を生んでいるかが重要になります。在庫が多い会社では、在庫が売上や利益につながっているかを見る必要があります。

ROAを見るときは、総資産の金額だけでなく、資産の中身も確認することが大切です。

ROAが高い会社の特徴

ROAが高い会社は、総資産に対して利益を効率よく生み出している状態です。いくつかの特徴が考えられます。

まず、利益率が高い会社です。売上高に対して営業利益や当期純利益が多く残る会社は、ROAも高くなりやすいです。価格決定力がある、粗利率が高い、販管費を効率よく管理できているといった理由が考えられます。

次に、資産をあまり持たずに事業を運営できる会社です。大きな工場や設備、在庫を必要としない事業では、総資産が小さくなりやすく、利益が出ればROAが高くなりやすいです。ただし、研究開発費や広告宣伝費、人材投資などが損益計算書の費用として出ている場合もあり、資産が少ないことだけで判断するのは適切ではありません。

また、在庫や売掛金の回転が速い会社もROAが高くなりやすいです。同じ売上を少ない在庫や少ない売掛金で実現できれば、総資産を抑えながら利益を出せます。

固定資産を効率よく使っている会社もROAが高くなる場合があります。工場や設備の稼働率が高く、投資した資産が十分な利益を生んでいれば、資産効率は良くなります。

ただし、ROAが高い理由が一時的な利益や資産売却によるものである場合もあります。高いROAが継続的な事業の強さによるものかを確認することが重要です。

ROAが低い会社の見方

ROAが低い会社を見るときは、すぐに悪い会社と判断するのではなく、なぜ低いのかを分解して考える必要があります。

ROAが低くなる理由の一つは、利益率が低いことです。売上高は大きくても、原価や販管費が重く、当期純利益が小さければROAは低くなります。価格競争が激しい、原材料費が上昇している、広告宣伝費や人件費が増えているといった理由が考えられます。

もう一つは、総資産が大きいことです。工場、設備、土地、在庫、売掛金などが大きい会社では、利益が一定でもROAは低くなりやすいです。設備産業やインフラ関連の事業では、事業を行うために多くの資産が必要になるため、ROAが低めになることがあります。

また、現金や遊休資産が多い場合もROAは低くなりやすいです。安全性のために現金を多く持っている会社は、利益に対して総資産が大きく見えることがあります。使われていない土地や設備がある場合も、資産が利益を生みにくい状態です。

ROAが低い場合は、利益が少ないのか、資産が大きすぎるのか、あるいはその両方なのかを確認することが大切です。

ROAは利益率と資産回転率に分解できます

ROAは、利益率と資産回転率に分解して考えることができます。これはROAを理解するうえで非常に重要です。

ROAは次のように分解できます。

ROA = 当期純利益率 × 総資産回転率

当期純利益率は、売上高に対して当期純利益がどれくらい残るかを見る指標です。

当期純利益率 = 当期純利益 ÷ 売上高 × 100

総資産回転率は、総資産に対してどれくらい売上を生み出しているかを見る指標です。

総資産回転率 = 売上高 ÷ 総資産

つまり、ROAを高めるには、売上から利益を多く残すか、資産を効率よく使って売上を生むか、またはその両方が必要です。

たとえば、高い利益率で利益を残す事業は、総資産回転率がそれほど高くなくてもROAを確保できる場合があります。反対に、利益率は低くても、資産を高速で回転させて大きな売上を生む事業では、ROAを一定水準に保てる場合があります。

この分解を使うと、ROAが高い理由や低い理由をより具体的に理解できます。単にROAの数字だけを見るのではなく、利益率と資産回転率のどちらに強みや課題があるのかを考えることが大切です。

ROEとの違い

ROAとよく比較される指標にROEがあります。ROEはReturn on Equityの略で、日本語では自己資本利益率と呼ばれます。自己資本に対して当期純利益をどれだけ生み出したかを見る指標です。

ROEの計算式は次のとおりです。

ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

ROAは総資産を分母にするのに対して、ROEは自己資本を分母にします。ここが大きな違いです。

総資産は、負債と純資産を使って調達された資産全体です。一方、自己資本は、株主に帰属する資本に近い部分です。ROAは会社全体の資産効率、ROEは株主資本に対する利益効率を見る指標と考えるとわかりやすいです。

注意したいのは、借入金が多い会社ではROEが高く見える場合があることです。借入を使って総資産を大きくし、利益を出している場合、自己資本が小さい分、ROEは高くなりやすいです。しかし、借入が多いと財務リスクも高まる可能性があります。

ROAは負債も含めた資産全体に対する利益率を見るため、借入の影響を比較的受けにくく、事業全体の資産効率を見るのに役立ちます。ROEとROAはどちらか一方だけでなく、あわせて見ることが大切です。

ROAと営業利益の関係

ROAの計算では当期純利益を使うことが多いですが、営業利益を使って資産効率を見る考え方もあります。営業利益を使う場合、本業でどれだけ資産を効率よく使っているかを見やすくなります。

当期純利益には、支払利息、特別利益、特別損失、税金などの影響が含まれます。そのため、ある年に大きな特別損失が出ると、ROAが大きく下がることがあります。反対に、資産売却益などの特別利益があれば、ROAが一時的に高く見えることもあります。

一方、営業利益を使ったROAは、本業の利益に注目します。工場や店舗、在庫、売掛金などの資産が、本業利益をどれだけ生んでいるかを見るために役立ちます。

ただし、営業利益を使うROAと当期純利益を使うROAでは数値が異なるため、比較するときは注意が必要です。ある資料では当期純利益ベース、別の資料では営業利益ベースでROAを計算している場合があります。

ROAを見るときは、分子に何の利益を使っているのかを確認することが大切です。

業界比較で注意したいこと

ROAは業界によって水準が大きく異なります。必要な資産の量が業界ごとに違うためです。

製造業では、工場、機械、設備、在庫などが必要になることが多く、総資産が大きくなりやすいです。そのため、利益が出ていてもROAは比較的低く見えることがあります。設備投資が大きい業界では、固定資産をどれだけ効率よく使っているかが重要です。

小売業や卸売業では、在庫や売掛金が大きくなることがあります。薄い利益率でも、在庫回転や売上規模によって利益を積み上げる事業では、資産回転率が重要になります。

サービス業やソフトウェア関連の事業では、物理的な固定資産が少ない場合があります。そのため、利益が出ればROAが高くなりやすいことがあります。ただし、人材、研究開発、広告宣伝など、貸借対照表に表れにくい投資が多い場合もあります。

不動産やインフラ関連の事業では、大きな資産を長期間使って収益を生みます。この場合、ROAは低めに見えることがありますが、安定したキャッシュフローや資金調達構造もあわせて見る必要があります。

ROAは異なる業界を単純に比較するよりも、同じ業界、似た事業モデル、同じ会社の過去推移で比較することが大切です。

ROAを見るときの注意点

ROAは便利な指標ですが、いくつか注意点があります。

まず、単年度だけで判断しないことです。一時的な特別利益や特別損失によって、当期純利益が大きく変動すると、ROAも大きく動きます。数年分の推移を見ることで、資産効率が継続的に改善しているのか、一時的な変動なのかを判断しやすくなります。

次に、資産の中身を見ることです。総資産が大きい理由が、現金なのか、在庫なのか、固定資産なのか、のれんなのかによって意味は異なります。現金が多い場合は安全性につながる一方、ROAを押し下げることがあります。在庫や売掛金が増えすぎている場合は、資金効率に注意が必要です。

また、ROAが高いからといって、必ず安全とは限りません。資産を極端に少なくしている会社は、効率が高く見える一方で、余裕資金が少ない場合もあります。借入を使って事業を拡大している場合は、ROEとあわせて負債の状況も確認する必要があります。

ROAは、収益性と資産効率を見るための入口です。結論を出すための唯一の指標ではなく、他の決算書項目と組み合わせて使うことが重要です。

貸借対照表と損益計算書をつなげて読む

ROAの良いところは、貸借対照表と損益計算書をつなげて読める点です。分子の利益は損益計算書から、分母の総資産は貸借対照表から取ります。

損益計算書だけを見ると、売上や利益の増減はわかります。しかし、その利益を生むためにどれだけの資産を使ったのかは見えにくいです。貸借対照表だけを見ると、資産の大きさや中身はわかりますが、その資産が利益を生んでいるかはわかりません。

ROAは、この2つをつなぎます。総資産が増えているのに利益が増えていない場合、ROAは低下します。これは、投資した資産がまだ利益を生んでいない、または資産効率が悪化している可能性を示します。

反対に、総資産があまり増えていないのに利益が増えている場合、ROAは改善します。これは、既存資産を効率よく使って利益を増やしている可能性があります。

ROAを見ることで、会社が資産を積み上げるだけでなく、その資産から利益を生み出せているかを確認できます。

初心者が確認したい読み方の順番

初心者がROAを読むときは、まず当期純利益と総資産を確認します。当期純利益は損益計算書、総資産は貸借対照表にあります。

次に、ROAを計算します。総資産に対してどれくらい利益を生み出しているかを確認します。単年度だけでなく、過去数年の推移を見ることが大切です。ROAが改善しているのか、低下しているのかを確認します。

その後、当期純利益率を確認します。ROAが変化している理由が、利益率の変化によるものかを見るためです。売上高に対して利益が残りやすくなっているのか、利益率が悪化しているのかを確認します。

次に、総資産回転率を確認します。総資産に対して売上をどれくらい生み出しているかを見る指標です。資産を効率よく使って売上を作れているかがわかります。

さらに、総資産の中身を見ます。現金、売掛金、棚卸資産、有形固定資産、無形固定資産など、どの資産が増えているのかを確認します。資産の増加が将来の利益につながる投資なのか、効率の悪化なのかを考えます。

最後に、同業他社や業界平均と比較します。ROAは業界差が大きいため、似た事業モデルと比べることが基本です。

まとめ

ROAとは、会社が持っている総資産を使ってどれだけ利益を生み出しているかを示す収益性分析の指標です。日本語では総資産利益率と呼ばれます。基本的な計算式は、ROA = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100 です。

ROAは、利益の金額だけでなく、その利益を生むためにどれくらいの資産を使っているかを見る指標です。同じ利益を出していても、少ない資産で実現している会社のほうがROAは高くなります。つまり、ROAは資産効率と収益性をつなげて見るための重要な指標です。

ROAは、当期純利益率と総資産回転率に分解できます。利益率が高い会社、資産を効率よく使って売上を生む会社は、ROAが高くなりやすいです。一方、利益率が低い会社や、多くの資産を必要とする会社では、ROAが低くなりやすいです。

ただし、ROAが高ければ必ず良い、低ければ必ず悪いとはいえません。業界によって必要な資産の量は異なります。製造業、不動産、インフラ、小売、サービス業では、ROAの見方が変わります。また、一時的な特別利益や特別損失、資産売却、現金残高の増減によってもROAは変動します。

ROAを見るときは、当期純利益、総資産、当期純利益率、総資産回転率、資産の中身、営業キャッシュフロー、業界比較をあわせて確認することが大切です。ROAとは、貸借対照表と損益計算書をつなげ、会社が資産をどれだけ効率よく利益に変えているかを理解するための基本指標です。

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